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少し前に静岡県西部地方出身者に、東京ではひとりしか会ったことがないと書きました。その後、そのひとりを扱った話が僕のウェブサイトの方にあることに気付いたので、今日はこちらに持ってきてみました。……なんてね。もうおわかりでしょうが、はっきり言ってまた手抜きです。さらに、このブログではたぶん最長の長文です。週半ばの退屈な夜、よろしかったら暇つぶしにどうぞ。あ、そうだ。Mac関係の話だけを集めているブログがあるようですね。こんな長い話でも、「有馬線」や「コピペ」のように拾ってくれますか?
僕のコンピュータ・デビューはちょうど10年前のこと。それは1月に阪神大震災、3月には地下鉄サリン事件があった年。そして野茂のメジャーリーグデビューの年だ。ということは僕のコンピュータのキャリアは、野茂のメジャーのキャリアと同じということになる。長いんだか短いんだか……。 僕は当時コンピュータデザインに偏見があったせいか導入は遅い方だったが、その頃文房具からコンピュータに仕事道具を移行するデザイナーのために、揃えるべき器機やソフトをトータルでアドバイス・販売する業者がボロ儲けをしていた。大きい所は「.Too」や「キヤノンの01ショップ」。小さい所はもう限りないほど。 知識があれば全部自分でできる。でもそれまでコンピュータなど触ったことがない業界だ。「何が必要なの?」「どう使うの?」「壊れた時はどうするの?」頭の中は不安でいっぱい。結局僕も「オレが教えてやるよ」という友だちの言葉を丁重にお断りして、そういう会社のお世話になったというわけだ。それが1995年の6月。梅雨時のじめじめした季節のことだった。 購入機種は当時のハイエンドモデル、Power Mac 8100/100(写真参照)。そしてその周辺機器・ソフト等、仕事に必要なものワンセット。仕事相手の紹介でほぼ「01ショップ」に決まっていたのだが、以前から何度も連絡をしてくれる感じの良い人がいたのでそこにも声をかけてみた。僕たちの使うコンピュータは普通Mac。だから社名にMac関係の言葉が入る(今は違う名前だが)この会社は専門っぽいと思ったんです。これは、ところがそうじゃなかったという話。HP版は注意を促すために全部実名だけど、ブログではまずいでしょうね。 電話に出たのは若い女性。話をしたかった人はもうその会社を辞めてしまったらしい。代わりに彼女が話を聞くというんだが、こいつがこれでも営業か?というくらいのタメ口。なれなれしいヤツだった。でもこちらとしては、仕事さえちゃんとやってくれれば問題ない。何かあっても会社として対応してくれるだろうと思い、とりあえず見積りをお願いした。その結果「01ショップ」と大差はない。さらにもう少し詳しいことを直接会って話したいと言う。 ──声がちょっとカワイイということもあった。とくれば顔も見てみたいと思うのが健康な男の子。「それならばいらっしゃい」と、こういうのもセクハラになるのだろうか。いいや会いたいと言ったのはオレじゃない。ともかく事務所にご招待をしたのです。 翌日、「ピンポ〜ン」と呼び鈴が鳴る。喜び勇んでドアを開ける僕の目の前にいたのは、ケーキ片手の超ミニスカートの女性。ただし超ミニサイズの女の子でもあった。それでも可愛かったら萌え系の魅力もあったんだろうが……。 でもここで帰したら別の意味でセクハラだ。とりあえず話を聞きましょうと中に入ってもらう。ソファーに座った彼女に思わず「パンツ見えてるぞ!」と忠告してしまった。営業としてはそれも能力なのか、気軽に話せる雰囲気の女の子──そして彼女の提案は魅力的だった。 僕たちの仕事の2大ソフト「Illustrator」と「Photoshop」を無料で教えてくれると言うのだ。コンピュータを使ったことがない人間の一番の望みは、少しでも早く使いこなせるようになりたいということ。この提案にはグッと来た。 さらに話しているうちに彼女の出身地が僕とほとんど同じで、僕の妹と同じ高校に通っていたこともわかった。静岡県西部の出身者にさえ東京では会ったことがないのに、そこまでピンポイントとは。こんな偶然まで重なってしまっては、もうここで買うのは運命としか思えない。その場で契約をしてしまった。──運命、契約、何かオカルトっぽいけど、僕にとってこの子はまさしく「悪魔」。こんなヤツに会わなければよかった。と、その時には考えもしなかったが……。 それから3週間後(当時はそれだけ時間がかかった)。モニターとプリンターを除く段ボール箱の山が届き、僕が仕事をしているうちに、彼女はセッティング。モニターが来るのは来週なので、仮の14インチモニターを使っていよいよレクチャーの開始ということになった。 学校のように詳しく教えてもらう必要はない。それは自分で勉強していけばいいことだ。今知りたいことは、僕の仕事はコンピュータではどうなるかということ。そこで簡単なA4版雑誌広告のラフスケッチを描いて、それを作ってもらうことにした。できたものを元に説明してもらうつもりだったのだ。 ところが「Illustrator」を立ち上げてしばらく作業をしていた彼女は、「自分の使っているMacとは少し環境が違うので、確認しながら一度作ってみます。それまで向こうで自分の仕事をしていてください」と言う。 まあ、そういうこともあるわなと仕事に戻って30分後。「できた?」と聞くと「もう少し待ってください」。──1時間後。まだできないらしい。──1時間30分後。モニターを見つめたままぴくりとも動かない。まるでフリーズ(当時はそんな言葉も知らなかったが)。 後ろから覗いてみると、誌面のサイズのA4以外は線の1本も描いてない。できないと言う。「じゃあ僕に何を教えるつもりだったんだ?」と聞くと「私はIllustratorでイラストを描くことを教えていたから……」こんな答え。 結局彼女は「Illustrator」でイラストが描ける。「Photoshop」で写真の初歩的な加工ができる。ということらしい。彼女が言うにはね。僕にはそれさえも怪しいと思ったが……。 とにかく、それが条件で契約したのにこれではサギだ。言ったことは守ってくれ。 彼女は戻って上司と相談すると言い残してトボトボと帰っていった。 10日後。それも夜の9時。突然明るい声で電話があって、これから上司を連れて説明に来ると言う。まあ時間はともかく、会社としては妥当な対応だろう。 でも話を聞くと、ソフトを教えるという件は彼女が勝手にやったことなので、会社としてはなにも責任を持てないと言う。そして担当はその上司に引き継がれるらしい。そしてそして、次の週になんと彼女はクビになっていた! 商品がすべて納品されていないのにだ。何だこの無責任な会社は! その引き継がれた男もなかなか連絡が取れない。というわけで、幸い分割でもリースでもないので、残りの器機がすべて納品された時点でもうその会社とはおさらば、と思っていたその時に──Macが起動しない。 僕は初めてのクラッシュを経験してしまったらしい。まだ仕事もしていないのに……。 理由はすぐにわかった。 実はMac本体が届いたその夜に、例の教えてくれると言っていた友だちが色々なソフトを持ってやってきて、次々にインストールしていったのだ。当時はそれが違法ということも知らなかった。そして何度めかの再起動が終わって立ち上がった画面には、ヘンテコな文字が並んでいた。購入初日で文字化けを経験した初心者は何人いるだろう。悪魔はもうひとりいた。 結局その場では文字化けは直ったが、その時点でシステムが半分壊れていたんだろう。それからクラッシュするまでの間、フリーズフリーズの連続だ。それでも何も知らない僕は、コンピュータとはそういうものだと思い込んでいた。 こうして僕のコンピュータ・デビューは、トータルで200万円以上の使い方もろくにわからない器機の前で呆然とすることから始まった。何がどうなっているのかわからない。だがまずは壊れたシステムを直さなければ、金をドブに捨てたようなものだ。 疑心暗鬼になっている僕は、もう誰の言うことも信用できない。実際、この業界、知ったかぶりの輩が多いのだ。だから全部自分で覚えるんだと決めて、秋葉原でユーティリティーソフトとすべてのソフトとフォントを新しく買い揃え、山のような解説書も買ってきた。 でもそんな大層な決心をするほどのことでもなかったようだ。仕事の合間に練習をするだけで、1ヶ月もしないうちに仕事で充分使いこなせるようになっていた。今より扱いが厄介だったMacがだ。その程度のもんだよ、コンピュータなんて。だからもう恐いものは何もない。いろいろ失敗しながら試してみればいいし、わからないことはインターネットでも調べられる。解説書もある。ソフトが壊れた場合なら、復旧のしかたはほぼ覚えた。Mac本体が壊れてしまったり、性能が物足りなくなったら買い替えればいいんだ。今は10年前の10倍以上の性能のものが1/10の値段で買える。 だからほとんどの分野でコンピュータやインターネットがなければ仕事が成り立たなくなっているこの時代に基本的なことも覚えようとしないオジサンは、僕に言わせれば臆病か怠慢なだけ。それでも仕事に支障がなければ問題ないが、本人がそう思っているだけで、取り引き先からは呆れられているんじゃないだろうか。またそれとは逆に使えると偉そうな顔をして、使いこなせない人を小馬鹿にするガキもバカだな〜と思えてくる。こんなものは個人の能力とは全然別物。練習すれば誰でも使えるようになるのだ。 今思えば、こう思えるようになったのも皆あの女の子のおかげなんだろうな。感謝した方が良いのかな? ところでこのMacを買った会社。その後も2度ほど「コンピュータを買いませんか?」という電話がかかってきた。買い替えるのではなく。自分の顧客の管理もできていない恐るべき会社だ。
by yattokamedagaya
| 2005-05-18 22:33
| Work & Mac
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Comments(6)
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delicatesign at 2005-05-19 11:36
95年が10年前ですか。長~いフリーズを思い出すと懐かしい。
新しいものに向う時は「習うより慣れろ」、 説明書を拾い読みすればなんとかなるモンです。 PC使わない人は、PCに抵抗あるんじゃなくて 「遅ればせながら」「新しいものを組み込むこと」に抵抗あるんでしょうね。 人に訊くこと、分からない状態の不安、バカだと思われるんじゃないかというプライド、 覚える自信のなさ、面倒さ、加えてPCにまつわるトラブル(ウイルスとか)を耳にして、 それがやりたくない気持ちを後押しする、「なくても生活できる」「今さら」・・・・・・ 趣味なら無理に覚えなくてもいいけど、仕事をするなら今はもうマズイ。 当人がマズイだけじゃなく、その頑固な姿勢(もしくは弱気な姿勢)が PC以外の他の面でも人に支障を来たしていることも、なくないかな。 にしても、顧客管理出来てないの、ヒドい。 いかに当時「PC・IT」といえば売れたかが伺われます。
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yattokamedagaya at 2005-05-19 14:05
>95年が10年前ですか。
違いましたっけ?今何年?あ、そういう意味じゃないんですね、よかった。 >長~いフリーズを思い出すと懐かしい。 Macは今でも1日に10回以上フリーズします。 この辺りの感覚はMacとPC(Win)は違うんですよ。 特に当時はMacは壊れるもの(ほとんどはソフトでハードは今の方が多い)で それをどう修復するかが、Macの扱いにはかなり重要でした。 仕事で覚えない人は、簡単に言えば性格または価値観に問題あり。もうひとつ 世の中の流れが読めないんでしょう。私なら、これだけでも仕事の発注をためらいます。 必要ない仕事もあるのでこれは例外。 ソフトをただで教えてくれると言われなかったらこんな会社から買わなかったのに 買った「Power Mac 8100/100」は良いマシンでしたよ。皮肉にもうちでは歴代最高。
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delicatesign at 2005-05-19 15:04
>1日に10回以上フリーズ
ウーム、それだけ働いてるんですね、Macも、そのユーザーも。 前に小耳に挟みました、Macだと半角文字が読みにくい、とか。 「ぁ」とか「ウーム」とか読めますか。 「~」も表示が悪いかな。
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yattokamedagaya at 2005-05-19 15:42
それだけ働いていると言いたいけれど──それは単にMacOSの構造上の問題です。
それも古いMacだけの。基本的に2つ以上の作業ができないんですよ。 で、無理をさせるとシステムを保護するためにフリーズする、それだけのこと。 Macの半角文字。これ面白いコメントっすね。ちゃんと読めますよ、Macでも。 たぶんこれはあなたの聞き間違い、というか意味を間違えて聞いていると思います。 その人が言いたかったのは「普段Macでは半角文字を使わないから(読み慣れてないから) 読みにくいな」という意味だと思います。 Macを使う人は事務じゃなくてクリエイティブな仕事が多いから、 実用的な半角文字は使わないんです。 私は10年間で半角文字は一度も打った事がありません。 っていうか、今のMacには半角文字を打つ機能が、もうないんじゃないだろうか。
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apple-of-1000 at 2005-11-23 20:53
読みながら、私も初めてMacに触った頃のこと、思い出しちゃいました。
私の場合、7年前。やっぱり、今のようにインターネットで何でも欲しい情報がすぐ手に入るような環境は無くて。 本や雑誌を買って、読みながら、ひたすら触ってみる・・って感じでしたね。 周りに、そんなに詳しいヒトもいなかったし。 で、IllustratorやPhotoshopの操作は何とかできるようになったものの、Macにフリーズはつきものなので(笑)システムのことも勉強しておかないとなーって感じで、また別の種類の本を読んで・・とか、昔ってそんな感じでしたよね。 販売会社のヒトって、あやしーもんですよね、今でも(笑) 会社の中ではWinしか触ってないっていう営業のヒトが、Mac売ってたりしますから(^-^; 私も、学校に通ったり、先輩につきっきりで教えてもらった・・というわけではなくて。 自分で調べて、触って覚えていったことがほとんど。 今考えると、つらかっただろーなと思いますけど(今ならネットで簡単にいけちゃいますもんね) だからこそ、身に付いたのかなーと思ったりもしますね。 簡単に手に入ったものより、苦労して手に入れたモノの方が、ヒトって忘れないし、大切にするでしょ?(^-^;
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yattokamedagaya at 2005-11-23 23:11
*apple-of-1000さん
読んでもらえましたか、ありがとう。 でも本当に読んでもらいたいのはその19才の子なんだけどね。 apple-of-1000さんはすでに実感していることだと思っていたから。 うちの60歳のガキにしてもそちらの19歳のお子ちゃまにしても 能力の問題で覚えが遅いというのは仕方がないと思うんですよ。 でも仕事なんだから覚えるか仕事やめるか、2つに1つなんだよね、本当は。 世の中のことがわからないから、未だに危機感がないと思うんだけど。 でも、一番頭に来るのは他人の善意を気にしないことなんだよな……人としてどうなのよ? 僕の場合はダメだと思えば見放せば良いんだけど(客だったんだけどね……) 会社勤めの場合はそうもいかないんでしょうね(社長もあれだし)。 大変だと思うけど頑張ってください、としか言えません。 この記事の場合、多少は下心があったので、天罰だと思っておきましょう!
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