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これは既に15年以上も前の話になるが、今でも鮮明に覚えている。
当時私が勤めていた広告代理店は、年に1度の社員旅行に ゴルフやスキーを組み合わせるというステキな会社だった。 もっともそれは私のようなスポーツ好きにとってはステキだということで、 半分の社員は蚊屋の外。そこで幹事になった者は、 それぞれが楽しめる企画を立てることに頭を悩ませるわけである。 その年の企画は千葉・房総方面で、海辺のホテルに宿を取り 次の日にはゴルフ組とシーワールド組に別れることになっていた。 当日は昼に会社に集まり、皆でバスに乗り余裕を持ってホテルに着いた。 それからはゆっくりくつろぎ、お定まりの宴会、ショー見物等、 幹事の力量ですべて楽しく滞りなく終え、後は自由行動ということになった。 おやじ連中は翌日のゴルフに備えて早めに寝ることにしたようだが、 我々若者はそうはいかない。同じ部屋のおやじ3人を残して私は部屋を出た。 そして他の部屋で2時間ほどバカ騒ぎをした後、自分の部屋に戻ってきた。 抜かりなく持ち出した鍵で中に入ると月明かりだけの闇。皆は既に眠っている。 ゴルフの朝は早いので、私もすぐにベッドにもぐり込んで目を閉じた。 ちょうど入口近くの他と離れた場所に、空いているベッドが一台あったのだ。 ──波の音が耳に付く。 目を閉じて何分、いや何十分経つだろうか?眠れない……。 かなり酒を飲んでいるし、疲れてもいるはずなのに、眠れない。 こんな時間に部屋の外に出ても仕方がないから、何とか眠るしかないのだが。 ──それにしても波がうるさい。 いくら海の近くだからといって、これほどうるさくていいものなのか? 他の3人はよくこの騒音のような潮騒の中で眠れるもんだと呆れて見ていると 私のベッドの下から、ベッドの下から目の前に──何かが立ち上がった? 何と表現したらいいのかこの時はわからなかったが、今なら言える。 映画「ゴースト」で悪人を連れ去る黒い影がいたのを覚えているだろうか? この映画を観たのはこの社員旅行の約半年後だったが、 CGの稚拙さのせいか、それともあれはコミカルさを狙っていたのか 映画館ではあのシーンに失笑する人が多くいたが、私は笑えなかった。 まさにその時見たものはあの通り。影が立ち上がってきたとしか思えない。 3人は私の足の向こうに並んで眠っている。それが影を透かして見える。 しかも、なぜか影がこちらを見ていないことがわかるのだ。 影は一番近くに眠るディレクターの枕元にスーと滑るように近づいていく。 そして、ぶつかりそうなほど近くまで顔を寄せて覗き込み、 何かを確認しているように数分間そのままの姿勢を続ける。 私は皆を起こした方がいいのか、起こしたらまずいのか全く判断ができず、 そもそも自分の声が出るのかわからず、ただ見守るだけだった。 ひとり目の確認が終った影は起き上がり、その隣に移る。 それが終るとまた隣。たっぷり時間をかけて3人の確認が終った。 そしてその時私は気付いた。それで終るはずがない。 部屋には──4人いるのだ! 影は、ゆっくりと、振り向いた。 振り向いたことだけはわかった。だが顔はわからない。 人間の姿をしているような形がないような、 そんな影が真直ぐズームアップするように近づいてくる。 そして私の胸の横辺りで止まり、顔をじっと見下ろす。 横目で見ながら震える私は、声も出せずに身体も動かない。 ただ目だけは閉じてはいけないとなぜか思い続け、 その顔がある(と思える)場所だけを瞬きもせずに見ていた。 すると次の瞬間、影は一気にその顔を近付けてきた。 ピントが合わなくなるほど近くまで、一瞬のうちにだ。 そのおかげで顔がわかった。目は暗い穴のように見えるし 輪郭もぼやけているようだが、誰の顔かといえばこれしかない。 桂 小金治。小金治師匠なのだ!! 普通ここまで話すと大爆笑になるんだが、当事者は笑えない。 どんな顔をしていようが幽霊は幽霊だ。 しかも私だけがこんな間近で見てしまった。どうなってしまうんだ。 皮肉なことに、そんな恐怖が声を取り戻させてくれた。 といっても「ピー」だか「ヒー」と小さな声が漏れただけだったが。 声が出れば身体も動く。 私はシーツを思いきり引き上げて頭からかぶり、身体を丸めた。 そしてそのままの体勢で待った。どれだけ待ったかはわからない。 恐る恐る顔を出してみると、覗き込む顔はもうなかった。 起き上がって皆を見ると、何もなかったように (実際彼らには何もなかったのだが)イビキをかいて寝ている。 波の音も小さくなっていた。 その後眠ったのかどうなのか。ウトウトしていたら朝日が差して皆が起き出し、 早速ゆうべの事を話したが「夢だよ」で片付けられてしまった。無理もない。 その上あせって部屋を出たので財布を忘れてしまったというおまけ付き。 朝は慌ただしくて、あの部屋の事をホテルの誰かに聞くこともできなかった。 もっとも聞いても答えてはくれないだろうが……。 小金治師匠は当時はもちろん、今でもご健在だ。 単に似ていただけなんだろう。そんな顔の霊がいてもいいじゃないか。 それとも、後で考えたのだが、あれは水死体だったんじゃないだろうか。 昔の師匠は(失礼だが)そんな顔をしていたような……。 そして私が見た霊も、髪が濡れて額に貼りついていたような……。 前にも書いたがこういう体験は結婚をしていた間だけで、今は見ることはない。 霊体験も酒の飲み過ぎによる幻覚のような夢と考えた方が理にかなっているらしい。 酒は当時より今の方が飲むんだが……それはそうかもしれない。 最後にこの部屋で顔を覗かれた4人の、15年後を書いて終ることにしよう。 とも思ったが……これもやめておくことにする。 皆私より6歳以上は年上なのだから、例え今現在“そういうこと”になっていても 特別に不思議なことではないだろう、というのがその理由なのだが……。
by yattokamedagaya
| 2005-08-16 00:38
| Memories(Sweet?)
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Comments(6)
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delicatesign at 2005-08-16 02:14
こんばんは。
・・・・・・コワイ!! 「小金治」に笑ったけど、コワイですー!! 今、私は酔っていて、この深夜にヒトリですから・・・(涙) 落ちもコワイです。 ”そういうこと” って、何ですかー!?
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yattokamedagaya at 2005-08-16 07:56
*delicatesignさん
小金治師匠──リアル幽霊とはそういうもんです。 作り話ならわざわざ恐怖心を薄れされるこんなことは書きません。 そういうこと──死んだり…病気になったり…お約束のことですが、何か? 画像は、またまた自分が怖いのでやめました。 ということで、じゃあバトン渡したよ! いやだったらアメリカチームのようにパトン落としてくれてもかまいません。
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delicatesign at 2005-08-17 19:24
元リレーの選手、バトンはキッチリ握りますょ!
(アメリカの場合、第一走者バトン握りすぎって話もあった?) とは言っても、あの、たいしたことない話で、 ヒトリでモンモンとしとこうと思ってたんですけど、 いいタイミングでふってくれたので、イキマース。
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yattokamedagaya at 2005-08-17 23:18
*delicatesignさん
ありがとうございます。アンカーでいいですからね。グリーンはアンカーにもなれなかった……。 誰かにお願いするのは苦手というよりキライなので、受けていただいてありがとう。 世界に広げよう霊の輪! We are the spirit world! さっそく読ませていただきます。ワクワク。
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mtsmabe1010 at 2005-08-25 17:51
影みたいな姿ってよく聞きます!それにしても怖いですねぇ。。
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yattokamedagaya at 2005-08-25 21:28
*mtsmabe1010さん
2〜3日前にSMAPの吾郎ちゃんの番組でもそんなやつ出てましたね。 これは先週の記事ですが、今週のTBだったので再エントリーです。 ホテルとルームナンバーがわかっているので 調べようと思えば調べれるんですが、怖いのでやめてます。
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